薬で境界性人格障害は治るのか?薬物療法と薬の種類について
境界性人格障害の治療において、薬を使った薬物療法がおこなわれることがあります。
何らかの薬を飲むことで境界性人格障害の症状が軽くなったり、病気が治ることはあるのでしょうか。
スポンサーリンク
また、境界性人格障害の薬物治療ではどんな薬が処方されたりしているのでしょうか。
薬物療法と境界性人格障害について
境界性人格障害の治療では、95%以上の患者さんが薬物療法を受けています。
薬を使用する目的としては、感情が不安定なときに薬を使うことで安定させることにあります。
ただし、薬ですべてが解決するわけではありません。
薬物療法をはじめる前に|境界性人格障害の治療
境界性人格障害の薬物療法をはじめるに、まずは薬を使用する目的をしっかり理解しましょう。
薬に対してむやみに不信感を持つのも、逆に薬に頼りすぎてしまうのも、どちらもいいことではありません。
1)医師から薬についてきちんと説明を受ける
どんな症状に対する薬なのか、薬の副作用などについて説明をうけ、納得した上で薬の使用をはじめましょう。
2)薬を飲めばすべて解決するわけではない
薬を飲んでいれば、症状がすべてよくなり病気が治るものでもありません。ほかの治療方法と並行していくことが大切です。
3)薬の処方をめぐって患者と医師の間でトラブルが起こりうる
薬を飲んでいるのに思うような効果が得られず、主治医への不満をつのらせたり、薬を減らされただけで「医師に見捨てられた」と感じるなど、心の葛藤が起こります。薬物療法への不満や希望は、率直に主治医と話し合うことが大切です。
4)薬の飲む量など、正しく服用する
処方された薬を溜め込み、不安が強いときに薬を大量に飲む患者さんもいます。そのようなことが起こると薬をもらえなくなったり、入院治療や転院をすすめられたりすることになりかねません。また、勝手に薬をやめると、症状が急変し悪化してしまうこともありますので、薬は決められた量を飲むことを守りましょう。過量服薬は、ときには命に関わる事態になる危険な行為ですので注意してください。
▼関連記事
→自傷行為やリストカットをする原因、理由は何?どんな心理状態なのか?
症状にあわせて様々な薬を使う
境界性人格障害の主な症状である抑うつ感や感情の不安定さ、衝動性の強さなどは、薬を飲むことで改善が期待できます。
そのため、外来診療や精神療法、カウンセリングと並行して、症状にあわせた様々な種類の薬が処方され、治療に役立てられています。
▼関連記事
薬の使用は主治医と相談しながら進める
医師から処方される薬は、患者にとっては、医師との関係を象徴するものになっていることがあります。
その場合、薬に対する期待や不安は、そのまま主治医に対する期待や不満につながります。
「薬を減らされた」「ちっとも薬が効かない」と不満を溜め込まず、薬に対する希望や実感は素直に主治医に伝えて相談しましょう。
それは自分の気持ちを言葉で表現する訓練にもなります。
▼関連記事
スポンサーリンク
→境界性人格障害の人の恋愛行動、セックス依存について、何を考えてるの?
実際に処方される薬の種類
境界性人格障害の治療で薬を使用することは多いのですが、実は境界性人格障害の専用となる治療薬は現在ありません。
患者本人の症状ごとに、うつ病や統合失調症などでも使われる抗うつ薬や抗精神病薬を処方されることになります。
▼関連記事
SSRI
SSRIは抑うつが強いときに使われます。セロトニンなどの神経伝達物質を調整する、セロトニン選択性の抗うつ薬が使用されます。SSRIの副作用は比較的軽く、普段通りの生活を送ることができるといわれています。
・パロキセチン(パキシル)
・フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)
・セルトラリン(ジェイゾロフト)
▼関連記事
→患者が主治医を好きになる「恋愛転移」は、境界性人格障害の治療でも注意が必要
抗精神病薬
抗精神病薬は、怒りや焦燥感を鎮める効果があります。境界性人格障害の衝動性が強く見られる場合に使われます。
・リスペリドン(リスパダール)
・クエチアピン(セロクエル)
・オランザピン(ジプレキサ)
・ペロスピロン(ルーラン)
▼関連記事
→境界性人格障害の受診は心療内科、それとも精神科?どこに相談すればいい?
その他の薬
その他にも、衝動性の抑制を目的に抗けいれん薬が使われることもあります。ただし、抗不安薬や従来の三環系抗うつ薬は使用を控えることがすすめられています。
▼関連記事
→自分のことが分からない?心が不安定なのは境界性人格障害が原因なの?
→境界性人格障害の不安定さは人間関係にもあらわれる?極端な考え方しかしない
→なぜ、境界性人格障害は周りの人を巻き込むのか?その原因・理由について
◆この記事は、元国立肥前療養所医長、元福岡大学医学部教授、元東京慈恵会医科大学教授、元東京女子大学教授、牛島定信先生執筆・監修の「境界性パーソナリティ障害のことがよくわかる本(講談社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。
スポンサーリンク