91 きりぎりす〜 |歌の意味・解説・翻訳【百人一首】

91 きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む 【後京極摂政前太政大臣】

読み方(きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ)

出展「新古今和歌集」

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意味「91 きりぎりす〜」

こおろぎが鳴いている、霜の降る寒い夜、私はせまいむしろの上に自分の衣の片袖をしいて、ひとりさびしく寝るのだろうか。

作者:後京極摂政前太政大臣とは?

この歌の詠み手:後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん)は、藤原良経(ふじわらのよしつね)のことで、九条良経ともよばれます。

藤原良経は、平安時代末期から鎌倉時代初期の歌人です。百人一首の第76番歌の詠み手:藤原忠通の孫にあたります。

第83番歌の詠み手:藤原俊成や、第97番歌の詠み手:藤原定家たちから歌を学びました。藤原良経は、有力な政治家として活躍しながら、和歌も多くの作品を残しています。

「新古今和歌集」の監修する立場でもあり、「仮名序(かなじょ)」と呼ばれる仮名書きの序文を書いたのも藤原良経です。

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解説「91 きりぎりす〜」

この歌は、一人で寂しく寝るわびしさを、秋のさびしさに重ねて詠んだ歌です。恋の要素も含まれていますね。

「きりぎりす」は、こおろぎのことです。「鳴くや」は「鳴いている」という意味。「霜夜」は「霜の降りた寒い夜」の意味になります。

「さむしろ」は、わらで編んだ粗末な敷物の「むしろ」のことです。「さ」は言葉の調子を整えるためにつけた音になります。

「さむしろ」は、「寒し」と「むしろ」の掛詞になっていますね。

「衣片敷き」は、着物の片方の袖を下に敷くという意味で、「一人で寝る」という意味になります。「ひとりかも寝む」は「ひとりで寂しく寝るのだろうなぁ」となります。

霜が降りるくらい寒い夜に、こおろぎの鳴き声を聞きながら、むしろでひとりさびしく寝るのか、あぁ、さびしいなぁ、という意味の歌になります。

和歌では、さびしい気持ちを歌にする、ということが多かったのですね。

上の句が「き」から始まる二字決まりの歌

上の句の最初の一字目が「き」から始まる歌は、百人一首の中で三首あり、その中でこの歌だけが二字目で決まる「二字決まり」の歌になっています。

15 きみがため ー わがころもでに
50 きみがため ー ながくもがなと
91 きりぎりす ー ころもかたしき

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