98 風そよぐ〜 |歌の意味・解説・翻訳【百人一首】
98 風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける 【従二位家隆】
読み方(かぜそよぐ ならのをがはの ゆふぐれは みそぎぞなつの しるしなりける)
出展「新勅撰和歌集」
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意味「98 風そよぐ〜」
風がそよそよと、楢(なら)の葉に吹いている。その楢の小川の夕暮れは、秋のように涼しく感じられるが、水無月(6月)ばらえのみそぎが行われていることが、まだ夏であることの証拠になっている。
作者:従二位家隆とは?
この歌の詠み手:従二位家隆(じゅにいいえたか)は、平安時代の末期から鎌倉時代のはじめの歌人で、本名を藤原家隆(ふじわらのいえたか)といいます。
藤原家隆は、藤原定家と同門のライバル関係で、この時代を代表する歌人のひとりです。約80年の生涯で、約600万首の歌を作ったといわれています。
第98番歌の作者:後鳥羽院から、すぐれた歌の才能を認められ、「新古今和歌集」の撰者の一人でもありました。
藤原家隆は、誠実な性格だったようで、承久の乱で島流しになってしまった後鳥羽院を慕い続けたそうです。
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解説「98 風そよぐ〜」
作者の藤原家隆が70歳くらいの頃にこの歌を詠んだといわれています。
この歌は、屏風に描かれた絵に合わせて貼る色紙に書くために作られた「屏風歌」です。
その絵は「六月ばらえ」の様子を描いたものでした。六月ばらえとは、陰暦の六月末日に行われる厄除けの行事のことです。
翌日の七月からは秋の季節になるので「夏越しのはらえ」と呼ばれることもあります。
「ならの小川」の「なら」は、川の名前とブナ科の「楢」の掛詞になっています。
「ならの小川」は、京都の上賀茂神社(かみがもじんじゃ)の中を流れている御手洗川の別名です。
「みそぎぞ」は「みそぎこそは」の意味です。「みそぎ」は、川などの水で体を清め、罪やけがれをはらうことをいいます。この歌では、六月ばらえのことを意味しています。
「夏のしるしなりける」は、「秋のように感じられるが、まだ夏であることの証拠だ」という意味です。
「風」から始まる歌は二首ある
上の句が「風」から始まる歌は、この歌を含めて二首あります。三文字目でどの歌かわかる「三字決まり」の歌です。
48 かぜをいたみ ー くだけてものを
98 かぜそよぐ ー みそぎぞなつの
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