自傷行為(リストカット)を治すことと支えることは違う
自傷行為(リストカット)の治療において、周囲にいる人が適切に対応することは、本人にとって必要かつ最大の支えになります。
ですが、立場を超えて「治そう」とすると、かえってよくない結果を招いてしまいます。
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自傷行為(リストカット)は、身近な存在ほど「治す」ことが難しい
周囲の人、特に親や家族、彼氏彼女の恋人、友達など、自傷行為(リストカット)をした本人の身近にいる人が「自分のせい」「自分に責任がある」と過剰に自分を責めてしまうことがよくあります。
そして「私が治さなくては」とがんばりすぎてしまうのですが、ほとんどの場合、かえってそれが適切な対応を難しくさせてしまいます。
自傷行為(リストカット)の治療は、周囲の人、身近な人ほどむずかしいものなのです。
専門家である医師やカウンセラーなどの医療スタッフですら、自分の家族や友人などの身近な人の自傷行為(リストカット)の治療を担当することは、原則としてありません。
周囲の人は責任を背負いすぎないようにする
親が子どもの育て方に責任を感じたり、彼氏彼女の恋人、周りの友達が、自分の行動が自傷行為(リストカット)の引き金になったのではないか、と悔やんだりすることは少なくありません。
ですが、まわりの人がすべきことは、後悔することや過去への償いではありません。
また、自分の立場を超えて関わろうとすると、かえって本人のためにならないことが多いのです。
育て方が悪かったのでは
たしかに子どもの育て方や養育環境は、自傷行為(リストカット)の原因に関係している場合もあります。
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しかし、そのことを重視しすぎると、親が責任を背負い込んでしまう事態を招きます。
私のあのひと言がきっかけになったのでは
「私の接し方がよくなかったのでは」と、けんかなど直接のきっかけに関わった友達や恋人が、自分のことを責めすぎてしまいます。
自分のせいだ、自分の責任だ、責任をとらなくては
周囲の人が責任を感じすぎてしまうと、罪悪感から本人に対してへりくだった態度をとりがちになってしまいます。
ちゃんと本人と向き合って、その気持ちを受け止めることができなくなり適切な対応がとれないので、かえって本人のストレスが強くなったり関係がこじれてしまったりします。
助けたい気持ちが、無意識のうちに「期待」に変わる
「助けたい」という思いは純粋でも、周囲の人が自分でも気づかないうちに、努力に見合った結果を本人に無意識に求めてしまい、関係が悪化してこじれてしまうことがあります。
周囲の人が「自分の行為が原因だ」と思い込むことは、無意識のうちに「自分が変われば本人も変わるのでは」「自分が何とかしなくては」と本人に対して何か影響を及ぼせると思うことにつながります。
相手が変わらないことへの失望感が出てくる
本人が良くなるように周囲が努力しても、本人が応えるとは限りません。
むしろ、ほとんどの場合は本人の反発や抵抗を招きます。
周囲の人の努力は知らず知らずのうちに本人への期待へと変わることが多く、自分の期待通りに変わらないと失望感が出てきてしまいます。
失望は本人と関わっていく意欲をそぎ、関係が悪化してしまいます。
「助ける—助けられる」という意識が本人の自尊心を失わせる
周囲の人が「助けてあげなくては」という想いを持って本人と接すると、本人には「自分は助けが必要な存在だ」と感じさせます。
本人の中で「自分は大丈夫」という感覚が育つのを妨げ、自分を高く評価できないままになってしまいます。
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