51番〜60番 百人一首の意味/解説/読み方一覧

51〜60番の百人一首の歌について、それぞれの歌に込められた意味・解説・翻訳・読み方をまとめてみたいと思います。

51 かくとだに〜(読み方・意味・解説)

51 かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを 「藤原実方朝臣」

藤原実方朝臣(ふじわらのさねかたあそん)の恋の歌です。

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【読み方】
かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもひを

【意味】
こんなにあなたのことを思っているのに、この気持ちを言うことさえできない。だから私があの伊吹山に生えているさしも草(お灸に使うもぐさ)のように燃える想いでいることをあなたは知らないのですね。

【解説】
「知らないでしょう!あなたへの燃える思いを!」と激しい恋心を詠った歌です。「さしも草」と「さしも=これほどまでに」の繰り返しのテクニックが使われています。

52 明けぬれば〜(読み方・意味・解説)

52 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほうらめしき 朝ぼらけかな 「藤原道信朝臣」

藤原道信朝臣(ふじわらのみちのぶあそん)の恋の歌ですね。

【読み方】
あけぬれば くるるものとは しりながら なほうらめしき あさぼらけかな

【意味】
夜が明けて朝になったらお別れですね。また夜が来ればあなたに会えるとわかっているけど、それでもやっぱり朝が来るとあなたと離れてしまうのでうらめしいなぁ。

【解説】
「また夜になったら会えるけど、帰りたくない!」と、ほんの少しの間でも離れるのがイヤだ、という恋人同士の歌ですね。

53 嘆きつつ〜(読み方・意味・解説)

53 嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る 「右大将道綱母」

右大将道綱母(うだいしょうみちつなのはは)の恋の歌です。

【読み方】
なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる

【意味】
今夜もあなたが来ないのを嘆きながらひとりさみしく寝る夜は、夜が明けるまでがどれほど長いことか。そんな私の思いをあなたにはわからないでしょうね。

【解説】
「あなたが来ない夜のつらさ、わからないでしょ!」と言いながらも、本当は分かってほしいと言いたい。

54 忘れじの〜(読み方・意味・解説)

54 忘れじの 行く末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな 「儀同三司母」

儀同三司母(ぎどうさんしのはは)が詠んだ恋の歌ですね。

【読み方】
わすれじの ゆくすゑまでは かたければ けふをかぎりの いのちともがな

【意味】
あなたはわたしのことを忘れないと言ってくれたけど、将来のことはわからない。この幸せな気持ちのうちに私は死んでしまいたい。

【解説】
長く生きて不幸になるくらいなら、今幸せなままで死んでしまいたい、という意味の歌です。

55 滝の音は〜(読み方・意味・解説)

55 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ 「大納言公任」

大納言公任(だいなごんきんとう)の歌ですね。

【読み方】
たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なほきこえけれ

【意味】
滝が流れ落ちる音が聞こえなくなってずいぶん経つけれど、滝の評判だけは流れて伝わり、今でも人々に聞こえているんだなぁ。

【解説】
今でも語り継がれる伝説のような滝。過去の栄光は人々の心の残る、と歌っている。

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56 あらざらむ〜(読み方・意味・解説)

56 あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな 「和泉式部」

和泉式部(いずみしきぶ)の歌ですね。

【読み方】
あらざらむ このよのほかの おもひでに いまひとたびの あふこともがな

【意味】
わたしはもうすぐ死んでしまうでしょう。あの世に行った時の思い出にしたいから、死ぬ前にもう一度あなたに会いたい。

【解説】
和泉式部が病気になって自分の死を予感したときに、恋人におくった情熱的な歌です。

57 めぐりあひて〜(読み方・意味・解説)

57 めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな 「紫式部」

紫式部(むらさきしきぶ)に歌ですね。

【読み方】
めぐりあひて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よはのつきかな

【意味】
久しぶりにあなたに会ったのに、ちゃんとあなたと分からなかった。よくわからないうちに、あなたは雲に隠れる夜中の月のように帰ってしまったわ。

【解説】
この歌の「あなた」は恋人ではなく、女友達のことです。「久しぶりなのに、ほんの少ししか会えなくて悲しい」とつかの間の再会を詠んでいる歌です。

58 有馬山〜(読み方・意味・解説)

58 有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする  「大弐三位」

大弐三位(だいにのさんみ)の恋の歌です。

【読み方】
ありまやま ゐなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする

【意味】
有馬山に近い猪名の笹原に風が吹くと、葉がそよそよと音をたてる。そう、あなたは私に「忘れたのですか」と言ったけれど、どうして私があなたを忘れるのですか。忘れるはずがありません。

【解説】
葉の「そよそよ」という音と「そうよ、そうよ」という意味の「そよ」がかけことばになっています。

59 やすらはで〜(読み方・意味・解説)

59 やすらはで 寝なましものを さ夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな 「赤染衛門」

赤染衛門(あかぞめえもん)の恋の歌ですね。

【読み方】
やすらはで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな

【意味】
はじめからあなたが来ないと分かっていたら、迷わず寝ていたのに。あなたをずっと待っているうちに夜がふけて、明け方近くに西に沈む月を見てしまいました。

【解説】
ドタキャンされた女性の歌ですね。怒ったりもせず、おだやかにたしなめている様子です。

60 大江山〜(読み方・意味・解説)

60 大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立 「小式部内侍」

小式部内侍(こしきぶのないし)の歌ですね。

【読み方】
おほえやま いくののみちの とほければ まだふみもみず あまのはしだて

【意味】
大江山を越えて、生野を通って行く道は遠いので、まだ途中にある天橋立にも足を踏み入れていないし、母からの手紙も読んでいないのです。

【解説】
「生野」と「行く」、「踏み(入れる)」と「文(手紙)」の二組のかけことばが入っています。作者の小式部内侍は和泉式部の娘です。優秀なお母さんの和泉式部に歌を作ってもらっているのでは?という噂があり、「歌合(歌を競い合う会)」に呼ばれたとき、藤原定頼から「もう、お母さんに歌を作って、と頼みましたか?」と嫌味を言われた時に、すぐに作ったのがこの歌です。

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