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境界性パーソナリティとは?

境界性パーソナリティ障害は、感情・行動・対人関係が不安定になる障害のことです。

成熟しきれていないパーソナリティが未熟なまま、様々な症状を生み、周りの人間関係でのトラブルを起こしやすく、周囲の人からは「困った人」と思われてしまう特徴があります。

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不安や怒り、孤独感などを同時に感じてしまい、それらのネガティブな感情を整理しきれずに、時にはリストカットや過食など、自分を傷つけることで気持ちを落ち着かせるケースも多くみられます。

また、境界性パーソナリティ障害の人の多くは「良い人か悪い人、」といったように両極端な考え方をしてしまうことも多く、良好な人間関係をつくることができずに悩みを持つ人が多いです。

一般的にはまだあまり知られていない「境界性パーソナリティ障害/境界性人格障害」について、さらに詳しくみていきましょう。

そもそも「パーソナリティ」ってなに?

パーソナリティとは、私たちは人それぞれ、物事のとらえ方や感じ方、行動などが違います。その人に特有の認知、感情、行動などの「あり方」をパーソナリティと呼び、性格、気質、倫理観、価値観など、すべてを統合する概念です。

境界性パーソナリティ障害です、と言ってもピンとこない人は多いでしょう。しかし、本人や家族、まわりの人がこの障害について知っているだけでも、ヒントになりなり、ずっと生活しやすくなります。

境界性パーソナリティ/境界性人格障害の成り立ち・特徴・症状について

・感情の揺れが激しい
・衝動的な行動に走りやすい
・対人関係でしばしばトラブルを起こしやすい
このような特徴を持つ人の存在が注目されるようになってきたのは1970年代以降のことです。

それまではこのような特徴を持つ人たちは「境界例」「境界性人格障害」などの診断名で呼ばれてきました。しかし最近は、その人のすべての人格を否定するような響きのある「人格障害」という言葉はあまり望ましくないと考えられるようになり「境界性パーソナリティ障害」といわれるのが一般的になっています。

境界性パーソナリティ障害の人が引き起こしてしまう問題は様々なものがあります。自傷行為のリストカットや家族への暴力もそのひとつです。他にも、薬への依存やアルコール依存症、過食や派手な異性関係、抑うつ感といったような形で現れる場合もあります。

その背景にはパーソナリティの問題があるのですが、その問題には気づかないまま、本人も周りの人々も苦しみ続けていることが少なくありません。また、その問題の原因に思い当たったとしても専門的な治療を受けにくかった、という問題もありました。それは、境界性パーソナリティ障害の治療が、精神分析療法を学んだ一部の専門家でなければ扱えない精神疾患と考えられてきたからです。

しかし、徐々に境界性パーソナリティ障害の研究が進み、原因解明が進むにつれ、精神分析療法だけが有効というわけではないとわかってきました。そうした新しい見解をもとに、日本の精神医療の現場に即した治療ガイド日本版が作成され、今後は治療を受けやすい状況が整っていくと期待されます。

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このwebサイトにおいては、境界性パーソナリティ障害とはどのようなものかを理解していくための知識と、新しい治療ガイドが示す治療法についてお伝えしていきます。明らかに境界性パーソナリティ障害があると診断されるほどではなくても、この障害と似た傾向を持つ人は少なくありません。家族や周りの人、あるいは本人自身が問題の本質を知り、対応を考えていくきっかけになれば幸いです。

境界性パーソナリティ障害/境界性人格障害に対する疑問について

境界性パーソナリティ障害で悩む人が、ここ近年増えてきています。症状はさまざまで、本人も周りの人も、まさか心療内科や精神科の治療の対象になるとは思わないことが多いようです。

Q.境界性パーソナリティ障害ってどんな病気?人格の問題なの?
Q.すぐに落ち込んだり、怒ったり、性格に問題がある?

境界性パーソナリティ障害は、未熟で不安定なパーソナリティが生む、心の病気です。その人の人格や、性格がわがままなだけといってかたづけず、生活環境や対人関係など多くの面に目を向ける必要があります。

Q.境界性パーソナリティ障害の原因は?生まれつき?育て方のせい?

境界性パーソナリティ障害のはっきりとした原因については、実はまだわかっていません。現在の研究において、脳の機能的な要因や、遺伝的な要素がその原因ではないかと研究されています。また最近では、思春期の友人関係や家族関係、生活環境などの関連も考えられています。

Q.「自殺する」ってよく言うけど、本気じゃないんでしょう?ウソでしょ?

境界性パーソナリティ障害の人の中には「これから死にます」「自殺する」といった電話やメールをしたりして、家族や友人を含めて騒ぎを起こすことがあります。これらは本気の場合があり、気を引きたいだけ、騒ぎを大きくしたいだけ、本気じゃないと決めつけてしまうのは危険です。リストカットなどの自傷行為で自分を傷つけている人が死ぬ気はないのか、本当に死のうとしているのか、この見極めは困難です。

Q.病院にいって医師の治療を受けさせれば治るもの?薬を飲めば治る?

境界性パーソナリティ障害は専門的な病院で適切な治療を受ければ、その症状は改善していきます。ただし、医師との間の人間関係でも同じような問題が起こることがある、というのが境界性パーソナリティ障害の特徴です。病院の心療内科や精神科へ行けばすべて解決、というわけにはいかないのが現状です。

Q.孤立しているあの人って心の病気?
Q.まわりの人とも話そうとせず、いつもひとりで暗い顔、境界性パーソナリティ障害?
Q.本人に直接話して、いろいろ指導していけば良くなる?

学校や職場などでも問題になることがあります。無断遅刻や無断欠勤が多い、次々と異性に言い寄るなどの場合は、周りの人が専門家に相談するというのも選択肢のひとつです。場合によっては周囲の人の誠実な対応が望まれます。

Q.家庭内暴力やひきこもりも、境界性パーソナリティ障害が原因なの?
Q.家族や周りの人にできることは?

境界性パーソナリティ障害から家庭内暴力やひきこもりに発展し、本人が治療を嫌がってしまう場合があります。まずは家族だけで専門医へ相談し、それから治療への橋渡しをすることもあります。

◆この記事は、精神科医、元国立肥前療養所医長、元福岡大学医学部教授、元東京慈恵会医科大学教授、元東京女子大学教授である牛島定信先生執筆・監修の「境界性パーソナリティ障害のことがよくわかる本(講談社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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