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患者が主治医を好きになる「恋愛転移」、医師への依存心が恋愛感情になってしまう

医師への依存心が、境界性人格障害(ボーダーライン障害)の患者自身には「恋愛感情」として自覚されることがあります。

しかし「治療者と患者」という枠組みは崩さないようにしないと効果的な治療は進みませんし、症状が悪化してしまうケースもあります。

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治療者の医師に対して患者は恋愛感情を持ちやすい?

境界性人格障害(ボーダーライン障害)の人は、治療の現場でも生身の人間関係を求めたがります。

そうした欲求は、治療者であるはずの医師に対して恋愛感情を抱き、主治医を好きになってしまうことも少なくありません。

これは「恋愛転移」の典型的な例です。

性的な接触

「好きです」などといって医者に抱きつこうとする、誘惑的な言動を繰り返す。

ストーカー行為

診察や面接の時以外にも会いたがり、何度も連絡をしたり、まちぶせしたりする。

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患者が医師を好きになる理由は?

患者が主治医に対して恋愛感情を持好きってになってしまう、ということ自体は、実は精神疾患、精神病においてそれほどめずらしいことではありません。

不安を抑えたい、依存欲求を満たしたい、という医師に対しての依存心から、医師に対して患者が特別な感情を抱いてしまうのです。

患者としては、医師とたんなる治療関係を超えた「特別な関係」になることで、常に支えてもらえるのではないかと期待してしまうこともあります。

しかしそれでは、医師との人間関係にばかり心がとらわれ、治療がまったくすすまなくなってしまうのです。

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恋愛転移になってしまった場合の対処方法は?

治療者である医者と患者という治療関係を逸脱しないために、さまざまな方法が考えられます。

治療の枠組みを守る

治療のはじめに「身体的な接触はしない」「面接以外ではあわない」などのルールを決めておきます。

医師と患者は、そのルールを守り、治療を進めていきます。

要求が通らないことにこだわり、患者が混乱を深めているようなら、医師と患者の一対一の関係にとどまらないような治療を考えることになります。

家族療法

患者の家族の協力を得て、患者の状態を安定させる。

入院療法

治療の枠組みを守りやすくすると同時に、医師以外のスタッフとの関わりも強まる。

社会療法

医師との関係だけでなく、広い視野を持つ。

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治療の中断

逸脱行為が激しい場合には、治療を続けられなくなることがある。治療の中断について常に話し合っておくことも必要。

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治療を受けにきていることを意識する

治療を続ける中で、患者は「先生の事が好きでたまらない」という気持ちになり、医師と何とか関係を結ぼうと行動に出てしまうことがあります。

しかし、その思いが叶えられることはまずありません。

なんのために医師との面接を繰り返しているのか、患者自身が治療の重要性に気づくことが必要です。

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実際に医者と患者の関係を超えて、性的な肉体関係になってしまったら

当然のことですが、医師は患者と性的な関係をもたないようにします。

とはいえ、医師やカウンセラーと境界性人格障害(ボーダーライン障害)の患者が、性的な関係になる例が皆無ではないのが現実です。

いったん性的な関係になると、境界性人格障害(ボーダーライン障害)患者の行動はエスカレートしがちで、どんどん要求するな内容が増えていきます。

そのエスカレートしていく患者の要求に対して、医師が応えてくれなかったときの反応も激しくなるおそれがあります。

そうなると医師は、治療者としての役目を果たせなくなり、治療者の交替が必要になります。

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◆この記事は、元国立肥前療養所医長、元福岡大学医学部教授、元東京慈恵会医科大学教授、元東京女子大学教授、牛島定信先生執筆・監修の「境界性パーソナリティ障害のことがよくわかる本(講談社)」の内容を元に、当サイト編集事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。

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